2024.03.01vol.107高齢者のサルコペニア予防
近年、高齢化が加速するわが国において、高齢者のサルコペニア(ギリシャ語で“サルコ”は筋肉、“ペニア”は喪失)を予防することの重要性が指摘されています。サルコペニアとは筋肉量の減少に伴って、筋力や身体機能が低下している状態のことです。
サルコペニアは放置すると他者の支援を必要とする要介護状態に至ることがあり、筋肉量減少・筋力低下・歩行速度低下の3つの要因から判定されます。
また、その重症度は筋肉量減少のみをプレサルコペニア、筋力低下もしくは歩行速度低下が加わるとサルコペニア、3つの要因すべてが認められる場合を重度サルコペニアに分類されます。
サルコペニアの段階で認められる歩行速度低下は、将来の生活機能低下の因子になることから、その前段階とされるプレサルコペニアから様々な予防的介入を行い、歩行能力を維持することが高齢者の健康増進において必要な課題といわれています。
高齢者は加齢、疾病、生活習慣等の要因が重なってサルコペニアを呈することがあり、加齢が原因で起こる「一次性サルコペニア」と加齢以外の原因で起こる「二次性サルコペニア」に分類されます。
サルコペニアのチェック方法
サルコペニアは握力・立ち座り・片脚立位保持・歩行速度・下腿周径の計測でチェックできますが、今回は3項目を紹介します。
①立ち座りテスト
椅座位にて両腕を胸の前で組み、椅子からの立ち座り動作を5回素早く繰り返し、動作に要した時間を測定します。
12秒以上の場合はサルコペニアの可能性があります。
②5m歩行テスト
2つの歩行様式「いつも歩いているように歩く」「できるだけ速く歩く」で5mの距離を何秒で歩けるかを測定します。
歩行速度の基準は1秒あたり0.8m~1m未満で、2回の5m歩行テストの結果が5秒より遅い場合はサルコペニアの可能性が疑われます。
③下腿周径
メジャー使用にて、ふくらはぎの一番太い周囲径を測定します。カットオフ値は男性で34cm未満、女性で33cm未満です。
簡易的な方法は、両手の親指と人差し指で輪っかを作り、その輪っかの大きさがふくらはぎよりも太ければサルコペニアの可能性は低いといわれています。
当クリニックでは医師の指示のもと、サルコペニアの有無のチェックや予防に対する運動指導を行っています。歩行速度低下でお困りの方、サルコペニア予防を希望される方など心配な方は、お気軽にスタッフまでご相談ください。
治療の対象者
- 下腿周径減の方(ふくらはぎが細くなった方)
- 歩行速度が遅い方
- 要介護認定(要支援・要介護)を受けている方
専門スタッフ(理学療法士)が実施すること
- 立ち座りテスト・片脚立位保持テスト・5m歩行テスト
- 握力・下腿周径の計測
- サルコペニア予防に対する運動指導
期待される効果
- サルコペニアの予防
- 歩行速度の改善